天国より野蛮 (リンクスロマンス) (単行本)
かわい 有美子 (著)
織田涼歌(イラスト)
(あらすじ)
永劫の寿命を持つ堕天使で高位悪魔であるオスカーは、永く退屈な時間の中、暇を持て余していた。
ある日、下級淫魔のロジャーが、一人の美しい神学生をつけ狙っているところに遭遇する。
ほんの気まぐれに興味を覚えたオスカーは、人間のふりをしてその神学生・セシルに近付くが、
すべてを諦観した彼はいっこうに心を明け渡さなかった。
徐々にセシルに惹かれていくオスカーは、彼と共に生きたいと願うようになるが…。
壮大な時間のなかで運命というか、神さまに弄ばれている恋人たちのお話でした。
こういうファンタジーの世界を描かれる場合によくあるのですが
その世界観に思い入れがある場合がおおいせいか
はたまたみんなにその世界に浸ってもらいたいがためか
説明が多すぎて、恋がお話の片隅に追いやられていきかねないのです。
今回もかわいさんの静謐に満ちたファンタジーを期待していたのですが
説明が多すぎて、ちょっと二人の恋が散漫な感じがしました。
このシリーズを描くということで、何巻かにわけて書いたらもっと
この世界における神さまの気持ちと、ふたりがなぜ恋しなきゃいけなかったのか
わかりやすかったんじゃないかなぁという感じがしました。
かなり高位の位置にある天使がある理由で名前も記憶も失い
堕天し悪魔として永い永い時間を生きております。
孤独すら感じないほどの永い時間を過ぎていく途中で印象的な出会いもあり
屈辱の別れもあり
それすらも時の果てに追いやられる時間を過ぎておりました。
そんなとき、下級の悪魔が手に入れようと画策していた神学生に興味をひかれ
身体だけは簡単に手に入れてしまいますが
その神学生の心はある意味無神論者であるという強さで生きておりましたので
神さまを信じていないこと、愛していないこと、畏怖を感じていないことで
悪魔に身を譲り渡しても罪と言う意識すらありません。
このふたりがなぜ魅かれたのか
身体だけは簡単に堕ちても恋の想いをまったく感じなかったのです。
恋のないBL???という感じで読み進めていくうちに
この二人の因縁というか、過去の何度も何度も繰り返される恋ゆえに
いま二人がであって、恋に落ちなければいけないというのはわかるにですが
その過去のお話がなんとなく胸にこないのです。
今回のお話を序章として、惰天使となった悪魔とか元天使さん、今天使さん
そして神さまを交えて壮大な愛の物語を綴っていってくれたのなら
このファンタジーの世界が楽しめるんじゃないかなという気持ちです。
神の孤独と絶望がいたたまれないくらい可哀想でした
唯一の絶対神であるがゆえに
誰よりも愛され、畏れられ、憎まれている存在
すべて神に造られている存在であるはずなのに
誰も本当の意味で神さまを愛する人はいないんですよね。
誰よりも愛した天使の心すら手に入れることができず
むざむざ人間にするしかなかった彼の気持ちをおもうと
彼もどこかで幸せにしてくださいとかわいさんにお願いしたいです。
片眼鏡とか、ヘテロクロミアとか、オッドアイとか
萌え要素というかかわいさんのこだわりは十分に感じることはできました。
でも・・・
あたしとしてはこだわりもいいのですが、愛も堪能したいんです・・・
[2回]
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