イノセンス―幼馴染み (幻冬舎ルチル文庫) (文庫)
砂原 糖子 (著)
陵 クミコ (イラスト)
(あらすじ)
小さな頃からずっと、乃々山睦の好きな人は幼馴染みの来栖貴文。高校卒業間近になっても真っすぐそう主張する睦に友達は困ったように笑うが、何故なのか睦にはわからない。女の子とのキスを目にして、自分もしてほしいと懇願する睦に来栖は…。来栖が上京する春、会えないまま過ぎてゆく月日、そして―。書き下ろしも収録し、待望の文庫化。
2005年に新書で出された作品に書きおろしがついて かなり分厚い本になっております。
主人公の睦は
発達障害がみられるために成長が人よりも遅いけれど
その分心が穏やかで素直で心やさしい。
心なきひとに振り回されるという一面はあれど、
少なくとも睦と接することで心温まる側面ももっている。
そして、そんな睦に心から愛され必要とされる来栖は幼い時から優秀な子供で
睦の世話をあれこれ焼いてくれて、高校生となったいまでも勉強を教えてくれ
就職の世話までしてくれる。
来栖は心では睦に必要とされることによって救われていたのだけれど
両親と血のつながりがない
幼い時に自分を引き取ってくれた父親は政治家になろうと苦労した人で
ひとのためにありたいという信念で自分のことを引き取ってっくれたということを
父の葬式の日に知る。
それ以前もいいこであろうとはしていたんでしょうけど、
血筋もわからぬ子供である自分が、亡くなった父や母のためにできることは
いい高校に入り、一流の大学にはいり、
一流の社会人となることだと心に刻み込まれていたため
睦との恋は振りすてて、東京の大学に進学し
心に決めたとおりに生きようとしていた。
その生き方の窮屈さすら気がつかないまま・・・
時が過ぎ、やがて睦は花屋のバイト始めていた。
幼馴染の来栖からは年賀状と気まぐれに手紙が届いたが
やがて、それも途絶えがちになり大学卒業後からは手紙すら不達になった。
お隣の家族に聞けば住所をすることなどたやすいのだろうけど
自分からの連絡を来栖は欲していないとあきらめきって、
もう会えないけれどせめて近くで住みたいと想いをつのらせ
東京の私立図書館で働くようになる。
があることはきっかけになり再び来栖と再会し時間を積み重ねていく。
さまざまな出来事があり、実家に帰ると決心した睦
その睦の姿に追いかけてすがりついてきた来栖
人はみな心の中に神さまを抱えていて、大事にしなきゃいけないのに
そんな簡単なことを忘れきってしまう
それは優しさであり、悲しさであることなのかもしれないと思えた一冊でした。
前回新書化されたときも、障害のあるということで、賛否両論もあったし
デリケートなテーマであるということや、難しいと感じた方もいらっしゃるようですが
人は様々な特徴がある生きものであるし
その特徴と共存して生きていかなければいけないと思うのです。
生きずらいと感じることがおおいその人たちがいることを
知ってもらうことは悪いことではないと思います。
[4回]
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