不法占拠 (幻冬舎ルチル文庫) (文庫)
神奈木 智 (著)
山田 ユギ (イラスト)
(あらすじ)
何ものにも執着できずにいる滝沢直人だったが、手負いの青年―十九歳の倉木夏唯を拾った夜に、その無味乾燥な日々は一変する。剣呑な目をして直人を力ずくで抱いたかと思えば、あどけない表情を覗かせる夏唯。部屋に住み着いて暴君のように振る舞う彼に、直人はどうしようもなく惹かれていく。しかし夏唯には宝物のように想う相手がいて…。
作者さんがあとがきで鬼畜攻めを描こうと思ったが、鬼畜になったと書かれている通り
けっこうな極悪非道さを見せる攻めでした。
でも、鬼畜かと言われたらそれではないような気がします。
幼い時から母親に顧みられないまま育ち
母親の情人を引き止めるためにその情人に弄ばれた過去をもつ夏唯
母の愛情と言うか、保護の手を失いたくはなかったために受け入れたことで
母の軽蔑の視線を受けるようになったこと
母の情人から言われた「好き」の一言のせいで
そういう思いすら受け取らなければ生きていけなかった幼い少年は
身体が大人になったけれど
愛情と言うものの見極め方・育て方を知らないまま生きていくことになります。
無知はあるいみ大きな罪だと感じてしまいます。
そして、なによりも子供が育つためには愛情というものが必要なのだと思います。
その夏唯魅入られ、身体で翻弄されている直人にしても
幼くして両親の離婚があり、母親について渡英するも
頼りにしていた母はあっというまに再婚し直人の不安感を理解できません。
ある意味母と言うより女としての自分を優先させてきたんだと思います。
母に愛されることなく
女としての母に翻弄された子供たちの傷は深く広く
普通の恋では満足できなかったのかもしれません。
これがこのふたりにとって、運命の恋だというのなら
せめて今後は穏やかな日常と言う幸福を祈りたいです。
[2回]
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