泣けるBL [コミック] アンソロジー (著)
泣けるBL
内容紹介
悲しい「涙」も嬉しい「涙」も、全てこの恋が始まりだった。「思いっきり泣けて、最後は幸せ。」この春、ストレスを抱える女性にお贈りする全く新しいBLアンソロジーが発売になります。「泣ける」をテーマに、豪華執筆陣がオール描き下ろし、オール読みきりでお届けいたします。◆カバーイラスト ヤマシタトモコ◆ラインナップ ヤマシタトモコ、榎田尤利(原作) ・峰島なわこ(作画)、木原音瀬(挿し絵/糸井のぞ)、元ハルヒラ、ARUKU◆Twitterコラボレーション モモ花
漫画はあんまり読まないので買うのを躊躇しておりましたが
木原さんの小説はいつ新書化されるか不安がありましたので 購入いたしました。
泣けて、最後はハッピーエンドというのなら購入層は買いやすいかな
と思いましたが
泣ける・・というよりは切ないお話が多かったとおもいます。
「 海とヘビースモーカー 」榎田尤利(原作) ・峰島なわこ(作画)
事業に失敗して、女に逃げられて、友人にも目も合わせられなくなった時
畠(はた)に告げられた病名は肺がんで
手術では病巣が取りきれない というものだった。
ろくでもないと自覚していた人生の最後に思うことは
大学時代の恋人であった和久井と彼の愛した故郷の海のこと・・
彼の訃報を聞いても線香を上げることもなかった。
なぜなら大学時代に付き合ってどうしようもない事情で別れたとはいえ
和久井のことを愛していたし、忘れられなかったから。
彼が自分を捨てたことが許せなかったし
自分が居なくても妻と娘との新しい生活を得て 幸福に過ごしていることが納得できていなかったし
なにより自分より先に逝ってしまったことが悲しかったから・・・
けれど人生の終りを自覚したときは彼の愛した故郷しか思いつかなかった。
はじめての駅
はじめての海の向こうには和久井の想い出に溢れていた。
そんな畠もとに現れたのは大学の頃の和久井の面影を宿した少女だった。
海で少女は畠に禁煙を勧め、タバコを取り上げる。
和久井は自分を許さないだろうと問う畠に 「とっくに許していると思うけど」と告げる 。
その言葉に後押しされたように畠は和久井の家を訪れる。
和久井の娘と思っていた少女は実は幼い頃の和久井で
畠を許していることを告げるために現れたのだった。
これがハッピーエンドかと言われたら肯けないものがあるのだけど
よくある話を切なさで満載できる榎田さんの力量に感心した。
これを読むだけでこの本を買った値打ちはあるのかなと思うのだけど
小説スキーとしては小説で読みたかったとつぶやかせてください(笑)
ペーパーがついていてこのお話の後日談?というか和久井の一人語りがあるのですが
これがまた良いのですよ。
短いお話だったのだけど二人の出会いと二人の恋のお話が端的に書かれていて
別れたけれど畠に何度も連絡を取ろうとしたこと
強情でかたくなな畠のことは理解していたのだけどそうされることは辛く哀しいことだったこと
その傷心を癒してくれた妻と娘との時間が自分にはあって
早くに逝ってしまう運命だったけれど後悔はない。
心残りは畠こと・・・
いろいろあって、病気になった彼がどんなに簡単に自分の命や生活を投げ出すのか
彼のかたくななで不器用な生き方をしっている自分には簡単に想像がついて
彼の心の重荷を減らして癒してやりたいと思う。
そしてなによりも彼の顔が見てみたいと思う。
これ一枚だけでやられてしまいそうな「泣けるBL」でした。
「トラと父ちゃん、最後の1日」ARUKU
「ストロボスコープ」ヤマシタトモコ
「選ばれる夜」モモ花
「遠い日のあとさき」元ハルヒラ
「君だけに愛を」河井英槻
「期限切れの初恋」木原音瀬(挿し絵/糸井のぞ)[3回]
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