頬にしたたる恋の雨 (ディアプラス文庫) [文庫]
久我 有加 (著), 志水 ゆき (イラスト)
頬にしたたる恋の雨 (ディアプラス文庫)
(あらすじ)
寄席を解雇された落語家のもず・こと文彦は、寄席の主・瀬島から万歳(まんざい)への転向を勧められる。
その頃、万歳は落語より格下に見られていた。
抵抗を覚えつつも、台頭し始めたばかりの“新しい万歳"を
理屈抜きで面白いと感じた文彦は、気の合う相方も得て万歳の道を歩み出す。
同時に、時に厳しく時に優しく己を導いてくれる瀬島に恋情を抱くようになり……?
昭和初期、万歳黎明期の大阪に花開く、興行師×藝人の恋。
久我さんの漫才師シリーズ
「
何でやねん! 1」
「
何でやねん! 2」
「
月も星もない 」
「
月よ笑ってくれ―月も星もない2」
「
それは言わない約束だろう」
「
恋で花実は咲くのです」
といっても時代設定が昭和初期なので今までのシリーズとはちょっと感じが違います。
他のシリーズももちろん好きなのですが、
この作品は雑誌掲載作からしっとりとはんなりした雰囲気が漂っております。
そしてまた挿絵がいいのですよねー
志水さんの色っぽくて艶っぽいこの挿絵があるからこそこの小説が何倍にもふくらんで
楽しめました。
「頬にしたたる恋の雨」
雑誌購入時に感想を書かせていただいたのですが、→
感想はこちら
売れない藝人であったもずを可愛がってたらしこんでいく興行師の瀬島が口説いた
あの一言がほんとうに印象的です。
優しいしてやりたいし、
可愛がってやりたいし
守ってやりたい。
けど、
コンジョワルして
泣かしたいとも思うー。
ああ・・苛めて、もっと・・・とつぶやいたのはあたしだけではないと思います(笑)
「恋風」
万歳という新たな表現は時流に乗りどんどん大きく力強くなっております。
あいも変わらず落語よりは下という意識はありましたが
もずは相方とともに自分たちの世界をどんどん広げていっております。
そして時に厳しく時に優しく己を導いてくれる瀬島との恋も順調です。
体も心もやわらこうに開かれ慰撫されることによって
どんどんもずが魅力的になっております。
情事のあと、腰がぬけてしもうて立てなくなっているもずを抱いて
ご飯を食べさせてもらうことには羞恥をかんじるのですけど
瀬島の口元に白いご飯粒がついているのをついばんでしまうことに羞恥はないようです。
どんどん無自覚に男ったらしになっていくようです・・(笑)
「心掟」
先の大戦も終わりを告げようやく平和を手に入れれたようで・・
もずの相方である団子の子供が大きくなり自らも落語家を目指そうとしているようです。
その子供であった和馬の口から語られる三人の父親像がよかった。
戦争の傷跡も生々しいあの時代だからこそ笑いは余計に求められ大きくなっていく
そして笑いという神様に見つめられ
瀬島の愛情に包まれて、これからもしっとりと美しい花をもずは咲かせていくのだろうなという
印象で終われたのがよかった。
あとがきで久我さんのブログが掲載されておりました.
興味のあるかたはどうぞ♪ →
腹八分目
[2回]
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