蒼い海に秘めた恋 (ガッシュ文庫) (文庫)
六青 みつみ (著)
藤 たまき (イラスト)
(内容)
“憎まれてもいい… あなたが好き”
特効薬開発の生体実験を受けていていたショアは、養父である開発室長のエルリンクに裏切られ研究所を逃げ出す。そして幼い頃から憧れていたグレイに会いたい一心で彼の元にやってきた。男らしく精悍なグレイは、想像以上の優しさでショアを迎えてくれる。しかしある日、ショアは出身を偽ったことでグレイを騙したと誤解され、彼に冷たく突き放されてしまう…。だけど、どんなに嫌われても好きな気持ちは変わらない―。けなげなショアに訪れた最初で最後の恋の行方は…。
ショア・ランカーム―――人類を無類なき悲劇と恐怖に陥れてきた『水腐病』から、
全人類を救うたった一人の存在。
研究所で大切に隔離され育てられてきたためか
世間に対してうといというか純真すぎるためか21歳という設定よりはるかに若くというか、
幼く感じられる。
子供のころ自分を救ってくれた
エルリンク・クリシュナとの関係は愛だと信じて疑っていなかったが
エルリンクに所長の地位を奪われることをよしとしなかった前所長に簡単にだまされて
「あの子は、もう完全に用済みの存在です」という表向きでしかないたった一言によって
今までの信頼も愛もすべて壊れたと思いこむ。
5歳から育てて、研究と抗体目的があったとはいえ
そこになにかしらの愛情と信頼の関係があったはずだとおもわれるのだけど、
ころりとだまされるあたり短絡的でお子様すぎるような気がする。
ショックを受け軟禁状態であったショアを救ったのは
資料用の記録盤に収録されていた、ある青年の姿だった。
太陽のような笑顔、澄んだ碧い瞳。やさしそうな声……。
一度でいい、この笑顔が見てみたい。
ショアは最後の望みを胸に飛び出した。オルソン・グレイの下に
『本当に役に立たない人間なんていない。
人は誰かを支えるために生まれてくるんだ』
グレイのもとでささやかな幸福を手に入れたと思っていたのだけど
ささやかな誤解がもとでグレイから遠ざけられ、
孤独な生活を感受するようになるのだけど
エリィの時とは違って、
自分を責めどんどん寂しくなっていくのだけれど
ただただグレイのそばにいたいと孤軍奮闘していた
脳腫瘍によって体調はどんどん悪くなっていくし
グレイの新しい恋人候補へ命じられた生還の見込みのない指令も黙って引き受けて消えようとするし
なんというか、ここまでも不幸にならなきゃヒロインになれないのだとしたら
ちょっとつらいなという話でした。
最後は無事グレイに助け出され、誤解も解け、関係も良好なままなんですけど
単純にいいひとであるグレイよりも
心の底で何考えているのかわからないけど、
うまく言葉にして言い表せれないエリィの孤独な魂の方がなんとなく心ひかれた話でした。
ちょっと泣きたいときにいいのでしょうとお勧めしときますね(笑)
「可哀そうなエリィの救済策」が発売日は未定ながら決まっつているそうです。
個人的にはそちらのほうが期待大かな。
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