宵闇の契り―桃華異聞 (幻冬舎ルチル文庫) (文庫)
和泉 桂 (著)
佐々成美(イラスト)
(内容)
色里・桃華郷に美貌の兄と共に売られてきた莉英は、容姿の見苦しさを嫌われ下男として働いていたが、兄が亡くなったのを機に店を追い出されてしまう。途方に暮れる莉英を助けたのは、窯子の用心棒・大我だった。莉英の外見を気にせず、純真な心を褒めてくれる大我に手ほどきを受けながら、やがて美しい売れっ子男妓に成長した莉英だったが…。
これの前作「
宵待の戯れ ~桃華異聞~」では美しい男妓だけど、ちょっぴり高慢でわがままなイメージを残した莉英が今回では主役です
彼の過去がたーくさん書かれていて読み応えがありました。
貧しい農村に生まれた莉英は兄青林とともに色里・桃華郷に売られてきたところからお話は始まります。
美しい兄とは異なる容姿を持つゆえに色里でもいじめられましたが
それとなく自分をかばい可愛がってくれる兄の存在があるゆえに健気に頑張って生きていくのです
それに一番大きかったのは大我の存在もあったのです
優しくおおらかで卑屈になるなと励ましてくれる大我
兄がなきあとはここで一番になれと生きる目標を与え常に支えてくれた大切な存在になったのです
莉英が美しくなり売れっ子となってしまったあとは
荒んで汚れて嫉妬したり意地悪をする自分が許せなくなっていましたし
こんな心根の醜い自分では大我にふさわしくないと自らの心を封印しておりました
なにより大我が自分に向ける情愛は家族や弟にむけるような優しい感情であると決めつけていたので
恋しい人・愛しい人と大河を欲している莉英にはその感情のベクトルの度合いがいずれ自分も大我も苦しめていくと思っていたのです
大我が旅立つ時
自分は選別を渡すだけで
心の中で別れの言葉を唱えながら踊るシーンは佐々さんの挿絵と相まって
壮絶に美しいシーンでした
ルチルさんの中では本も分厚かったですがなにより内容が読み応えがあってよかったです。
最後呪詛によって以前の醜い顔になってしまった莉英
心も体も弱っていて、それでもなお大河にだけは弱い醜い自分をみせまいと突っぱねる場面はほんとうに涙うるうるになれますよー
一夫一夫主義なんで遊郭ものはちょい苦手ーと手に出さなかったんですが
これはほんとうに読み応えがあってよかったです。
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