ささやかな幸せ (ビーボーイノベルズ) (単行本)
藤森 ちひろ (著)
町屋 はとこ (イラスト)
(内容)
最初は、ほんの出来心だった―。アートディレクターの瑛司は、老舗会社から依頼を受ける。そこで出会った御曹司の雅之は何事にも控えめだが、瑛司への熱い想いを眼差しに乗せ、伝えてくる。同情か、好奇心―あるいは、欲望か。その想いにつけ込み、躰だけの関係を結ぶ瑛司は、ベッドでは淫らな雅之との情事に溺れ始める。しかし傲慢な自分に対する罰なのか、雅之の切り出した言葉に…。一生に一度の思い出なんて、俺はいらない―。
ぶっちゃけ町屋さんの挿絵目的で買ったんですけど
思いがけなくよかったです。
今回ビーボーイは西江さんの「高校教師」といい、榎田さんの「はつ恋」」といい、
いい作品がそろっていたがために注目から外れているのが残念なような気がします。
これからクライアインとを訪ねるために急いでいた瑛司は表参道で道を尋ねられた。
不機嫌さを露わにしたまま瑛司がみたものはあまり年齢の変わりない野暮ったい眼鏡をかけていた。
上等な仕立てのスーツ、ネクタイ
悪くない顔立ちはメガネで覆われていたが整ったパーツがバランスよく収まっていた。
わかりにくい店を探していた彼のためにわざわざ追いかけて説明する瑛司
それだけでもう出会うことはないはずだったのだけど
ある日、老舗の文具店の御曹司とアートディレクターとして出会うことになる。
仕事で付き合ううちに雅之が常に控え目にけれど熱い視線で自分を見ていることに気が付き
それが同情か、好奇心か、はたまた欲望なのか判断がつかないまま
雅之の想いにつけこんで身体だけの関係を結ぶ。
そのはかない関係ですら雅之にとって思いがけない幸運と感じていて
それだけでいい
一生に一度だけの思い出にできればと考えていたのです・・・
瑛司が傲慢にも雅之は自分だけのものと思い込み始めていたそのとき
雅之から思いがけない言葉を告げられます。
「お見合いをすることになったんです」と
そう言われた時に初めて瑛司は遊ぶつもりでいた雅之に遊ばれていて
そのことに喪失感を覚えていた・・・
一生の一度の思い出に使われたことに対する憤り
雅之に対して自分の気持ちを伝えるのです・・・
大人なんだけど、はじめての恋に右往左往しながらあがいているのですけど
雅之の控え目で切ない想いがよかったです。
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