くちびるの封印 (幻冬舎ルチル文庫) (文庫)
うえだ 真由 (著)
高星麻子 (イラスト)
(内容)
高校生の芳条悠紀は、満員電車の中で知り合った年上のサラリーマン・鷹宮瑛司に惹かれ、自ら誘って「一度だけ」との約束で関係を持ってしまう。しかし、その後鷹宮と再会した悠紀は、寂しさを忘れさせてくれる彼と身体だけの関係を続け、いつしか溺れていくのだった…。どんなに身体を重ねても、くちびるは重ねることのなかったふたりだが―。デビュー作品・待望の文庫化。
アイスノベルズ版で読んだ記憶があるのですが・・・
哀しいというか幸いというか鳥頭なのですっかりきれいに忘れきっておりますので
まるで初めて読むかのように楽しめたあたしって・・という気持ちです(笑)
母親にも捨てられて
残された頼れるはずの父親にも放置されている高校生の芳条悠紀
父親から声掛けてほしいいと願うのはたった一言
「進学どうするんだ」という悠紀のことを気遣う思いだったのですが、
どうやらそれも果たせない夢になりそうで・・・・
生きることにも将来にもなんの夢も希望ももてそうにありませんでした。
そんなときに満員電車でであった年上のサラリーマン・鷹宮瑛司に魅かれて
肉体関係をもってしまうのです。
たった一度だけのはずの逢瀬だったのですが、
ふたりはお互いの孤独を埋めあうかのように関係を深めていきます。
このお話は悠紀もそうですが、実は瑛司も心に愛されていないという虚無感を持ちながら生きておりました
瑛司は子供のできない本妻の変わりにということで望まれ妊娠したのですが
その同じような時に本妻の方も妊娠していたということがわかり
認知はされましたが、後継ぎでもなくなり・・・
定期的に母のもとを訪れる父はけっして泊まることはなく・・・
母が死んだことで引き取られはしましたが、いい義母だともおもうけれど、義兄だともおもうけれど
なじめること・・・愛されているという充足感がないままに大人になり
結婚はしましたが、妻は実家に依存したままふたりの生活を築くことはなかったのです。
大阪のホテルで初めて外泊して泊まった悠紀が、
これ以上一緒にいたら
これ以上好きになってしまったら・・・
手に入れれないひとをまた渇望し、絶望感で心を壊してしまいそうで
最後の思い出に眠っている瑛司の唇に口づけを残す・・・・
愛されているという充足感がどんなに人は必要か
恋のせつなさもそうですが、考えさせられるお話でした。
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