ヒマワリのコトバ-チュウイ (幻冬舎ルチル文庫 さ 2-20)
崎谷 はるひ (著)
ねこ田米蔵(イラスト)
(内容)
カフェバー「コントラスト」のマスター・相馬昭生と弁護士の伊勢逸見。高校時代、恋人同士だった二人だが、伊勢が昭生にとって自分は“誰かの身代わり”なのではと疑ったことから徹底的に破局してしまう。以来十年、伊勢を許せずにいるのに体は繋げ、微妙な関係を続ける昭生。そしてそんな昭生のそばにいる伊勢。すれ違ったままの二人は……。
三部作・信号機シリーズ最終作です。
「アオゾラのキモチ―ススメ」 では恋を失った史鶴慰め、また後日の事件ではひそかに解決に力をかしたカフェのオーナーとして
「オレンジのココロ―トマレ」の朗の叔父としてでばっていた昭生が主人公です。
ある種の事件が絡んでいるので甘くて爽やかでは全然ないこのシリーズですが
この最後のトリを飾ったこの作品ではまったくもって爽やかさはありませんし
恋の切なさを味わう前に人生の不条理の洗礼を受けます。
思春期前期の少年であった昭生が初めて恋に近いようなときめきを
覚えた青年は体の弱い姉の婚約者としてであった。
姉の悲願のような想いをかかえて姉の子の世話をし、
時間のすべてを家事に費やした少年に与えられたのは、
兄の愛人というか恋人ができたので家事とか子守ばかりしなくていいという現実だった。
反抗期であることも相まって他人との接触の方法をうまくとれないまま高校生活を送っていたのだが
ある日太陽のように輝いている青年伊勢と出会うことによって
ささやかな幸福を味わうことができるのです。
義兄にあこがれを感じていたので、伊勢と関係をもつことになにか違和感を感じていたのですが
その違和感は伊勢にも伝わっておりやがて二人の関係はぎくしゃくとぎこちないものになり
やがて伊勢の浮気の告白によりなにもかもどうでもいいと昭生は思い切り
破綻を選ぼうとするのですが
伊勢はそのときになってやっと自分の選んだ方法(浮気)の重さを知り
昭生と再び幸せになろうと努力を重ねていくのですが・・・
ふたりの恋は二人だけのものであるはずなのに
姉の生き方・考え方に大きく影響を受け、左右に揺さぶられて、
あらしの中の小舟のように行き先も到着先もわからないまま
たゆたっているようです。
そういう意味では姉の突飛な考え方の犠牲者とでもいいましょうか・・・
婚姻とか、家族であるとかは個人の幸福のものでもあるので
個々の人たちの考え方によるものが大きいと思うのですが
あんまり偉大?すぎる考えのもとでは
ほかの人たちの感情も多かれ少なかれ犠牲になるものもあるということを知らないということも
無垢であるということもある意味罪が大きいと思いました。
痛みというか疵無し生きていきたいと思うのですが
疵を持っているからこそできる生き方というのが大人なんだなというのが今の感想です。
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