眠る兎 (ビーボーイノベルズ) (単行本)
木原 音瀬 (著)
単行本: 220ページ
出版社: ビブロス (2002/09)
発売日: 2002/09
(あらすじ)
ほんの冗談で書いた手紙をきっかけに、高校生の浩一は、十も年上の男と付き合うことになってしまった。男が名乗る名前も職業も偽りだと知っていたし、他に好きな女の子もいたけれど、男があんまり純粋で―。
昨日、木原さんの名作「美しいこと」の感想を書き上げたので
もう一個懐かしいお話で木原さんを堪能したいなと思って、本棚からひっぱり出してきたこの一冊
デビュー作ですが、本当にしっとりとしたいいお話でしたし、木原さんの甘甘といっていいのかな・・・
そういう雰囲気が堪能できます。
お話は高校生の浩一が女の子に自分の欠点を容赦なくあげつられ、落ち込んでいたときに友達にゲイ雑誌で交流を求める文章がのっており、それに思いつきで返事をすることから始まります
人の気持ちを玩んでも平気なあの若さを子供たちは得意げにひけらかしていく
やがて、大人になったときにその傷とか痛みを知ることもあるとは思いもしないんでしょうねぇ
デビューから、人の痛い気持ちをあからさまに探っていかれてますねー木原先生・・・
傲慢にもそうしてであった男が、自分が通う高校の教師と言うことも知っていて振りまわします
でも、そうした付き合いの中で遠藤の純粋さ、可愛らしさに気がつくにつれ、遠藤に引かれていき、少しでも彼にふさわしい男になろうと地道に変わっていきます
(どんなにがんばっても十の年の差は縮まらないし、いつかはばれる。
だから早く大人になりたいと思った。誰にも文句をつけられないくらい、大人になりたいと思った。臆病な人を守りきれるぐらいの大人に早くなりたいと思った) その努力もむなしく自分が高校生であることがばれて、遠藤から別れを言われてしまい・・・・取り付くしまもなくなってしまいました。
親友の柿本の計画で音楽準備室に閉じ込められ、二人で話し合いをし、恋心を確認するんですが、それがまたいいんです
あんなに臆病だった遠藤が、心のたがをはずしたとたん
「・・・・・・あんな子供に、君を渡したくない。」
遠藤の呟きに近い声に言葉に浩一はノックアウトされました(笑)
まぁいわば、“無意識下でしているいい男に育てよう計画”に乗ってしまったと言えばいいのでしょうか(笑)
続編で「冬日」ものっています
もっと大人のいい男になった浩一は、ますます遠藤の魅力に捕らわれているようです
二人の関係とか、将来を見据えてきちんと養子縁組の形をとろうと提案してきます
相変わらず、どこか臆病な遠藤はその提案を嬉しくは感じても、両親に告白することを考えると気が重いのです
実家からふらっと散歩に出かけ、懐かしい小学校の校庭で、中学時代の好きだった親友一之瀬と再会し
幼いとき、なんで急に一之瀬から離れようと思ったこととか
あの時の話をし、今の恋愛について語りうことができ、お互いに優しい気持ちを交わすことができました
遠藤もまた浩一と出会い、毎日の生活を積み重ねることにより自分も少しずつ変わっていけていることに気がつきます
そして、これからの時間を二人で過ごすために大切なものをよーく見据えることで、二人にとって、お互いにとって何がいいことなのか結論をだすのです
しっとりとしたいいお話でした
木原さんの作品を読むことができてよかったなと、しみじみ思える作品だとおもいます
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