off you go （一穂 ミチ）

off you go (幻冬舎ルチル文庫) [文庫]
一穂 ミチ (著), 青石 ももこ (イラスト)

off you go (幻冬舎ルチル文庫)



（あらすじ）

その朝、就寝したばかりの良時を突然、妹の夫・密が訪れた。海外赴任から帰国すれば自宅はなく、妻・十和子に離婚を言い渡されたという。折しも独り身の良時は密のペースに呑まれ、快適な同居生活へ。幼い頃から共に身体が弱く療養の日々を同志のように過ごしてきた密と十和子、ふたりの絆を誰より知る良時。ふしぎな均衡で繁がり合う彼らは…。

表紙がとても印象的なこの作品

「ｉｓ　ｉｎ　ｙｏｕ」で不思議で哀しい魅力をもっていた佐伯の 恋の物語。

先の作品も好きだったのだけど

幼馴染の大人同士の熟成された感情が好きなので

あたし的にはこちらの方が読み応えがありました。

ここではないどこかに惹かれていた佐伯

彼が闘病生活で読んでいた本はいつもいつもここではないどこかにいく本

そんな憧れを胸に持ちつつ

生きるためのパートーナーに選んだのは決定的な病気はないのだけど

どこもかしこも弱く、健やかには程遠い生活を追っている十和子

そしてどこもかしこも健やかで優しい十和子の兄の良時への秘められた恋心

良時への叶えられない恋心を秘めていた密にとって十和子という存在がとても大きくて

でも良時への恋情を抑えることができない。

決して手に入れれないものを追い求める佐伯のシニカルで皮肉屋さんなところが

なぜなのかこの物語を読むことでスコーンと疑問が解消されてすっきりしました（笑）

「off you go」でいきなさいと十和子に後押しされた恋は

「off we go」でふたりでいきましょうとなる過程が丁寧に描かれていて

とっても素敵なお話でした。