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Verger ―果樹園―

アタシの読んだ本(主にBl)の感想を 雑然とたらたらとつぶやいております

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疵―スキャンダル〈3〉 (かわい 有美子)

疵―スキャンダル〈3〉 (B‐PRINCE文庫) [文庫]
かわい 有美子 (著)
杜山 まこ (イラスト)




(あらすじ)

司馬に救われ、ようやく平静を取り戻した桐原は彼を出し抜いてついに望む地位を手にいれる。しかし裏切りを知った司馬に去られたとき、その大きな喪失感にうちのめされる。プライドをかなぐり捨て不器用ながらも夢中で取りすがる桐原の中で、身体だけの関係だったものがゆっくりと変わりはじめていく…。90年代、大蔵省高級官僚たちの孤独な愛と抵抗―。新たな書き下ろしを加えて3巻登場。


あんなことや、こんなことや

いろいろな辛い出来事をようやくの思いで切り抜けてきて

ようやくささやかな生きている幸福を味わうこともできていたはずなんですけど

同期で出世を争っていた司馬だって望んでいたはずの地位を

自分の目の前でちらつかされて司馬の思いなど考えもしない浅はかさで

その地位を手に入れてなの司馬との関係は変わりないと思う桐原。

頭がいいはずの大蔵官僚でも

そうした感情の機微にうといというか・・・

考えたたらずさんというか・・・・

それでのそういとこすべて含めて可愛らしいおバカさんだというか・・


そうした浅慮さを司馬を失って気がつくという以前に

自分で自分を追い込んでいく桐原でした。


救ってくれたはずの司馬が

自分自身を傷つけて行く

完璧に見え、どこか同じ男として嫉妬を感じることもあった司馬ですが

彼ですら傷つくこともあると言うことに気がついた時には

もう遅く・・・

桐原が幼いわが子のために復縁しそうになっているのでした。

司馬の幸福のためには身を引くしかなくて

ただただできることは司馬の仲の良い友人有賀に

「元気であるか」と問いかけるだけです。

そう思っていてもなお、なにもかも捨てても手に入れたいものは何かと

問いつけていった先には司馬の存在なんですよね。

そこまでして痛みと疵で満身創痍の状態になってようやく

自己を確立してきた桐原です・・・

いままでのことをなにもかもなかったことにして

やり直せれるわけではないのだけれど

すくなくとも気がついた地点からは新しく行動を起こすことができますものね。


今まで自分の疵と傷みにだけおののいていた桐原ですが

周囲に無関心でそのことによって周囲に疵をつけていたことにきがつき

娘を抱きしめることによってやさしい感情にあふれ

歩く娘の姿に可愛らしさを感じ

ぬいぐるみを買ってかえる桐原。

これは男と男の愛とプライドをかけた物語なのかもしれませんが

愛と再生を願うお話だと思います。


あと残りの一巻

楽しみです。




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天国より野蛮 (かわい 有美子)

天国より野蛮 (リンクスロマンス) (単行本)
かわい 有美子 (著)
織田涼歌(イラスト)





(あらすじ)

永劫の寿命を持つ堕天使で高位悪魔であるオスカーは、永く退屈な時間の中、暇を持て余していた。
ある日、下級淫魔のロジャーが、一人の美しい神学生をつけ狙っているところに遭遇する。
ほんの気まぐれに興味を覚えたオスカーは、人間のふりをしてその神学生・セシルに近付くが、
すべてを諦観した彼はいっこうに心を明け渡さなかった。
徐々にセシルに惹かれていくオスカーは、彼と共に生きたいと願うようになるが…。
壮大な時間のなかで運命というか、神さまに弄ばれている恋人たちのお話でした。

こういうファンタジーの世界を描かれる場合によくあるのですが

その世界観に思い入れがある場合がおおいせいか

はたまたみんなにその世界に浸ってもらいたいがためか

説明が多すぎて、恋がお話の片隅に追いやられていきかねないのです。

今回もかわいさんの静謐に満ちたファンタジーを期待していたのですが

説明が多すぎて、ちょっと二人の恋が散漫な感じがしました。


このシリーズを描くということで、何巻かにわけて書いたらもっと

この世界における神さまの気持ちと、ふたりがなぜ恋しなきゃいけなかったのか

わかりやすかったんじゃないかなぁという感じがしました。



かなり高位の位置にある天使がある理由で名前も記憶も失い

堕天し悪魔として永い永い時間を生きております。

孤独すら感じないほどの永い時間を過ぎていく途中で印象的な出会いもあり

屈辱の別れもあり

それすらも時の果てに追いやられる時間を過ぎておりました。

そんなとき、下級の悪魔が手に入れようと画策していた神学生に興味をひかれ

身体だけは簡単に手に入れてしまいますが

その神学生の心はある意味無神論者であるという強さで生きておりましたので

神さまを信じていないこと、愛していないこと、畏怖を感じていないことで

悪魔に身を譲り渡しても罪と言う意識すらありません。

このふたりがなぜ魅かれたのか

身体だけは簡単に堕ちても恋の想いをまったく感じなかったのです。


恋のないBL???という感じで読み進めていくうちに

この二人の因縁というか、過去の何度も何度も繰り返される恋ゆえに

いま二人がであって、恋に落ちなければいけないというのはわかるにですが

その過去のお話がなんとなく胸にこないのです。



今回のお話を序章として、惰天使となった悪魔とか元天使さん、今天使さん

そして神さまを交えて壮大な愛の物語を綴っていってくれたのなら

このファンタジーの世界が楽しめるんじゃないかなという気持ちです。



神の孤独と絶望がいたたまれないくらい可哀想でした

唯一の絶対神であるがゆえに

誰よりも愛され、畏れられ、憎まれている存在

すべて神に造られている存在であるはずなのに

誰も本当の意味で神さまを愛する人はいないんですよね。

誰よりも愛した天使の心すら手に入れることができず

むざむざ人間にするしかなかった彼の気持ちをおもうと

彼もどこかで幸せにしてくださいとかわいさんにお願いしたいです。


片眼鏡とか、ヘテロクロミアとか、オッドアイとか

萌え要素というかかわいさんのこだわりは十分に感じることはできました。

でも・・・

あたしとしてはこだわりもいいのですが、愛も堪能したいんです・・・




拍手[2回]

人でなしの恋 (かわい 有美子)

人でなしの恋 (リンクスロマンス) (単行本)
かわい 有美子 (著)
金 ひかる (イラスト)



(あらすじ)

青山の同潤会アパートに居を構える仁科千尋は、伝奇小説や幻想小説などを主軸とした恋愛小説を書き、生計を立てていた。独特の色香を持つ仁科は、第一高等学校時代に仲の良かった友人二人に、異なる愛情を抱いている。無垢な黒木には庇護欲と愛おしみ、そして懐深く穏やかな花房にはせつない恋慕と情欲を。しかし、仁科は黒木に内緒で、花房とひそやかな逢瀬を重ねていた。そんなある日、花房とじゃれあう現場を彼に見られてしまい―。




三者三様の想いに彩られた昭和の初期の恋物語でした。

以前雑誌リンクス

「逢引の夜」として掲載された部分が内容も改稿されて載っております。

後半の「こごり繭」が追加されて

一冊の「人でなしの恋」となっておりまする~。

雑誌掲載部分だけでは理解不能というか、物足りない感満載でしたが

今回はそういった三人の思いの行きつくところ+

仁科の自分に対して持っている劣等感の原点が心霊ホラー部分として

追加されて、ちょっと読みやすくなっていると思います。



「向陵の二喬」などと呼ばれるほど美しかった仁科


仁科が心の底で想う男は二人いて

心の底から甘えることができて、体も任せられる男花房

剣道が好きで、その姿勢とともにまっすぐに生きていく男花房に抱かれながら

医者としてまっとうに生きている花房を

自分と同じ闇に落とし込んだことに恐怖している。


もう一人の男は黒木

仁科と同じく「向陵の二喬」と呼ばれ柔らかな印象を見せながらも

心の底は情に強く、かたくななまでに男らしい一面を持っている。

色覚異常を持つことと、仁科より伸びなかった身長に劣等感を持ち

若きころに父を失い

家長として、検事として、兄として、自分としてまっとうに生きている。

そのまっとうさや、劣等感に

柔らかな自分を差し出せることに癒されるのだった。


仁科的には 黒木に心の底で魅かれながら

体も心も癒し、甘えさせてくれる存在である花房をいとおしんでいる。

そして、そういう自分にまた嫌悪を感じ

眩しくて見えない闇の底に堕ちていくような思いを味わっているのだけれど

花房は、実は黒木が心の底では仁科に魅かれているのを知っているが

仁科を奪われたくはない黒い想いを持っているので

けっしてそのことで黒木に注進しようとはしていないのです。

黒木もまた、深層意識化では仁科の独特の魅力にひかれていて

仁科が求めている花房という男を自分の妹と結婚させて

邪魔者を排除しようとしていたんですよね。

恋って

恋ってこわい~(笑)

などとしみじみ思いながら心の底で聞こえていた曲は

ジュデイオングさんの「魅せられて」という曲です。→年齢がばればれ(笑)



女の心も体も海のようなもの

好きな男の腕の中で抱かれながらも

違う男の夢をみちゃうもんなんです(笑)





ついでに・・デーモン閣下版も(笑)














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いとし、いとしという心〈2〉( かわい 有美子)


いとし、いとしという心〈2〉 (ビーボーイノベルズ) (単行本)
かわい 有美子 (著)
南田チュン(イラスト)


(内容)

屈指の名門旅館の跡継ぎである兄の陰で、ひとり鬱屈した思いを抱えていた千秋。彼にとって、素直で愛らしい隣家の幼馴染み・侑央は唯一の救いだった。侑央が兄に恋い焦がれてさえいなければ―。侑央を抱きしめ、兄に似た声で侑央の耳に甘くささやく。「目ぇ、閉じとき。そしたら兄貴としてるみたいやろ?」大人気の「いとし、いとしという心」待望の続編!すべての因縁が始まった高校生編と大量書き下ろしを収録。





期待道理の内容と満足感です。

前作「いとし、いとしという心」では千秋に振り回される歓びに翻弄されて困惑しながら

そこはかとなく寄り添っていくふたりというのが

堪能できました。

今回はもっとがっつりというか、ユキに笑顔とかすべて手に入れるために

がんばっている千秋というか(笑)

策略をめぐらせて、絡まっている罠に気がつかせないまま手に入れていく経過を

楽しませていただきました。

かわいさんは前作で千秋に同情票が集まってしまったけれど

今回は千秋視点で書いて千秋の狡さ、腹黒さ、計算高さを書いてみた

のように書かれてありましたが

95%黒かろうが、5%の純情があれば可愛く愛おしく思えてしまうのは

しかたない業・・というものではないでしょうか。

(年齢のせいとは口が裂けてもいいません(笑))



今回、まずふたりの生い立ちからはじまり、

雲の上のひとのような壮一という兄の存在が書かれておりました。

ほんとうにいい人で人からの期待を一身に受けることが当然のように思われる存在でしたよね。

彼という存在があったせいで、

千秋という存在が家庭内でどれほど認められなかったか

愛されてはいないわけではないのでしょうが

孤独であったというのはひしひしとわかりました。

けれどまた彼も一番目(跡取り)でいなくてはいけないという

暗黙のプレッシャーに耐えていなければいけないという孤独感をもっていたんじゃないかなと

今回思いました。

人はなかなか他人の心の奥の奥まで踏み込めれないし

踏み込んではいけないもののあるのだと思いますね。



ユキを欲しくて、失いたくなくて

体だけでもと蹂躙しちゃった千秋はユキの笑顔を失ったことに気が付き

愕然としてしまいユキから離れて生きていくことを選びます。

最後進学のために京都駅まで行くバス停でユキの姿をみて

心の中だけで別れを告げる場面は本当に悲しかったです。

あの場面だけでもう十分千秋の狡さなんて波のむこうに飛んで行った

と思えたのはあたしだけではないと思います(笑)



そして現在に至るお話は2人で出かけて初めてユキのほうから心を許して

寄り添った事後のお話から始まります。

時間の経過とともに壮一を想っていた気持ちも風化され

優しい想いで過去を振り返れるようになってきたユキ

そばには千秋がいて、子供のころのように優しい時間と

甘い時間を共有している

そここに不意に現れた千秋の縁組のお話

千秋の想いに振り回されて始まったこの時間に終わりを告げられるようになり

初めてユキ自身も千秋に魅かれていたことに気がつくんです。

最後あのおばあさまを丸めこんだ手口といい

周囲にそれとなく自分の気持ちを伝えていくやり方といい

千秋の狡さを満開にされておりましたが

ふたりでともに地獄に堕ちてもいいと思えるのなら

それくらいの狡さなんて可愛いものだと思います(笑)



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未成年 (かわい有美子)

未成年。 (幻冬舎ルチル文庫 か 2-1) (文庫)
 かわい 有美子 (著)
金ひかる(イラスト)
 
(内容)

…どうしよ…、好きなのに…、好きなだけなのに…っ

大阪でも有数の進学校、綾星学院。高等部から外部編入した水瀬智宏は周囲との軋轢に戸惑うが、やがて、伊集院篤彌、浅井亨、東郷馨というかけがえのない友人を得る。 彼らとの時間が、退屈だった智宏の学園生活を鮮やかに染める。しかし季節は移ろい、四人の感情と関係は徐々にそのかたちを変えて…? 初期作品、書き下ろし短編も収録して待望の文庫化!

この本を初めて読んだのは6,7年前

juneからえらく長く離れていて、

BLという世界が築き上げられていることに気が付き始めたころなので

もうむさぼるように読んでいたころなのです。

ということで、さらーと読みはしまして情感のあるいい文章だなぁと思いながらも

とくに読みかえすことのないまま本棚の奥で眠っていると思います。

今回文庫化ということで、書き下ろしがついていることに負けて購入いたしました。

あのころと今のあたし

そう変わりがあるわけではないんですが、

書き下ろしの東郷視点があることによってわかりづらかった彼の気持ちがようやくわかったような

そういう気持ちになりました。

伊集院というあて馬くんの役割も非常におおきかったし・・・

というか、これからも彼次第によって大きく情勢が変わりそうな雰囲気があるので

彼視点でのこれからも読んでみたいような気もちです。



大阪でも有数の進学高校に外部編入した水瀬は、

周囲の進学とか、他人を蹴落としてもという雰囲気になじめなかった。

惑っている彼がもう少しシニカルな少年なら、ああ俺に勝てないことで焦っているんだなと

同級生を馬鹿にしながらでも同調できたんでしょうが

どこか幼いところのある水瀬にはなじめないままだった。

そんなときに声をかけてきた伊集院は水瀬をうまく甘やかしたまま彼が心地よい場所を提供してくれた。

旧華族の流れをくむ伊集院、IQ160の天才児浅井、物静かで大人のような雰囲気をもつ東郷

彼らと知り合いともに時間を過ごすことで

退屈だった時間が鮮やかなきらめきをもったものに変化していく。

その時間を大切にしたいという気持ちも持ちながらも、

だんだんと東郷に魅かれていく自分

そんな大切な時間をすごく丁寧に情感豊かに描かれております。

でてくる登場人物もまた個性的で

こんなやつはおらへんでしょうと言いたいところなんですけど

そういう大人のようにふるまえる彼らのなかにも

繊細でガラスのような壊れやすさが微妙なバランスで同居しており

感受性豊かだったあの頃をちょっと苦い思いで振り返ることができました。


高校生であるという時間軸と

いろいろな背景をもちそれにあがいている少年たちと

これからの可能性を秘めて歩いていく未来があって

楽しく読むことができました。





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HN:
Lianha
性別:
女性
自己紹介:
「風と木の歌」に触発され
juneで開花w?
一時はこの世界から脚を洗っておりましたが
またどっぷりとつかっております


好きな作家さん
木原音瀬さん・可南さらささん・水原とほるさん
水壬楓子さん・ふゆの仁子さん・華籐えれなさん
剛しいらさんなどなど・・・

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