ムーンライト (ガッシュ文庫) (文庫)
剛 しいら (著)
金ひかる(イラスト)
(内容)
風もなく穏やかな夜だった。この春、大学病院の医師となった一樹は、近くの浜辺に倒れていた美貌の青年を見つける。記憶を失い心臓に持病を持つ、その青年の担当医となった一樹。だが、彼の記憶は一向に戻らないまま…。欲望も駆け引きもない無垢な彼は刷り込み本能のように、一樹の白衣を掴んで放さない。一樹はそんな彼を愛おしく思い、自宅に引き取ることにしたが…?苦悩する医師と純真な患者のセンチメンタル・ラブ。
ムーンライトという題名を聞いて「セーラームーン」のED「ムーンライト伝説」を思い浮かべた方がいらしたら同年代ではないでしょうか(笑)
あのころ戦う漫画といえばメインはやはり男の子というのが主流でしたので
ちょっぴりお洒落で可愛い女の子が、愛のために戦うのも胸キュンキュンものでしたが、
あの歌の前向きにがんばろうというのもいいメッセージソングであったと思います。
♪偶然もチャンスに変える生き方が好きよ♪
ある意味この本も偶然の出会いをチャンスに変えて
生き方もですが、未来をも変えた一人の青年のお話です。
月の綺麗な夜に愛犬をつれて散歩していた若き医師 一樹
海岸沿いの浜辺で倒れていた青年を見つけたのです。
記憶を失い、
心臓に難病をもつ青年は生まれたての雛のように一樹を慕ってくれます。
記憶を失ってなお健気に頑張って生きようとしますが
青年のこれからの不安に必死に耐えている姿に魅かれ
これからは青年と生きることを決心する一樹でした。
ある日警官が訪れ青年の母が殺されたことを告げられることにより
青年の過去が明らかになるのです。
作者さまがあとがきで、
ちょっと前、こういったジャンルが耽美と呼ばれていた時期なら
別の結末を迎えていただろうと書かれていました。
あのころの耽美と呼ばれていたころの作品が悪いとかそういうわけではないのでしょうが
運命とか、
必然とかに縛られたあのころならたしかにそういった結末が多かったと思います。
ある意味、BLと呼ばれ
そういったものにとらわれなくなった作品が読めるようになったからこそ
ここまで隆盛したのではないかと思われます。
病気をもつ息子を溺愛した母親は世間のしがらみや煩わしさから逃げるように
地方の別荘に引きこもって暮らしていました
同じ病気で夫を亡くした彼女は息子を失いたくないという気持ちが高じて
なにもかもから息子を引き離していき
自分と息子だけの世界を作っていました。
ある夜、
事件が起こり息子はその隔離された家から逃げ出し海岸に倒れます。
そして医師一樹と出会い、生まれたての子供のように
生き方から、人生の楽しみ方様々なことを学び直していくのです。
月の満ち欠けにかけて、自分の人生もかけていく不安に襲われながら
一樹とともに生きていくために手術を受ける決心をつけるのでした。
難病ものってある意味アンハッピーを予測されるせいか
BLには少ないと思うのですが、
これも作者さまの力量とおもいますけど
生きるこれからを考えるという意味ではおもしろく読ませていただきました。
でも、携帯小説のようにやたらアンハッピーを選ぶ安易な小説が増えないようにと
祈りたいです・・・・
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