陰猫 (ガッシュ文庫) (文庫)
水原 とほる (著)
草間さかえ(イラスト)
(内容)
会社員の雅幸は結婚式直前に婚約者に失踪されてしまう。穏やかで真面目な雅幸は彼女を捜すため、彼女の弟・綱紀の元を訪れた。不本意ながらも捜索を手伝ってくれる綱紀に、雅幸はその旅先でからかわれて強引に抱かれてしまう。以来、どこか陰のある綱紀に惹かれていく雅幸。ねだられると拒めないのは恋なのか。いつの間にか雅幸の心は綱紀に傾き始めていた。ああ、この旅が終わらなければ―。
多数からうける暴力も強姦も無理じいもない水原さんでしたが
抒情的で静かな文章に草間さんの挿絵がすごく雰囲気を高めてくれています
平凡な幸せをもとめて、結婚を決意した女性にお金を持って疾走されてしまい
今までの価値観とか、
常識の何かかが欠乏したような飢餓感に気がついてしまった
真面目で平凡な会社員の雅幸です。
消えた婚約者の姉を探すために弟である綱紀のもとを訪れるのです。
運命の出会いとでもいいましょうか・・・・
なぜか魅かれあっていくのです。
京都まで失踪した姉を追いかけながら、
折々の会話で彼ら兄弟の生い立ちや生き方を知るにつけ
陰でしか生きていけない猫のような孤独を知るのです。
そして、
その孤独に心ならずも似たような影を自分も持っていることに気がつくのです。
綱紀に抱かれることで自分の心の埋められない闇をかいまみ
自分もまた孤独だったこと
ゲイであることにうすうす気がついていく心理描写は本当にうまいと感じました。
同僚であり、雅幸の友人である当山の存在もうまくあて馬であり
雅幸の本当の性癖に気がつく準備係として存在しております
婚約者である美紀も女であることに絶対の自信をつかめない不幸を抱えながら
自分自身の幸せをつかもうとあがいているところも魅力的です
美紀を支える女友達の度量の広さもおもしろかったです
脇役さんたちでスピンオフ作品ができると思わされる作品でした。
一途な純愛をささげてくれる大きな猫を飼ってみたい方いかがでしょうか?
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