君に降る白 (ダリア文庫) (文庫)
朝丘 戻。 (著)
麻生ミツ晃(イラスト)
(内容)
高校を卒業してから二年。芹田藍は昼は古本屋、夜は身体を売るバイトをしていた。淡々としている藍を玩具のように扱う客が多い中、愛情を教えてくれたのは自分の身体を一切求めてこない客、成瀬恵一だった。平凡なサラリーマンで、温かく純粋な成瀬。だが彼に心惹かれるも、過去の出来事から自分自身を認められない藍は、遠ざかることしかできず―。切なく心揺れるラブストーリー。
以前からコバルト文庫でちょっと一味違うBLを書かれる方だな
と思って読ませていただいていたのですが
最近は本の出版が無いなと残念に思っていたのですが
今回はダリア文庫でだされたせいでしょうか
コバルトとは雰囲気が違うなという感触です。
コバルト文庫での朝丘さんは・・・
薄い記憶の中では曖昧な不幸に覆われてお話が終わっていることが多く
絶対的な幸福とかハッピーエンドを崇拝しきっているかたには
ちょっとつらい内容だったと記憶しております。
今回のこのお話は自分の常識を非常識と考えてみることで生まれたそうです。
人の価値観はそれこそ人の数だけあって、
その価値観を理解しないまでもただ感じようとした時、
初めて人をおもいやれるんじゃないか。
視野が広がって、自分の人間としての幅も広がるんじゃないか。
吐き出せる言葉も増えるんじゃないか。
そんなふうに作者さまが思われたおかげでこの作品が生まれたせいでしょうか
どこもかしこも心優しく懸命に生きている人たちばかりだと思いました。
幼いころの不幸(自分が幼い時に養子にだされたこと・養子として大事にされたけれどどこか幸福になれなかったこと)ゆえに孤独にさすらっている少年芹田藍
自分の性癖ゆえに悩み傷つき、それでも懸命に人を愛あうることを欲しているサラリーマン成瀬
藍が昼間働いている古本屋さんの店主佐藤店長
同じ本屋で働いている気さくで人間味あふれた野宮
みんなが自分たちの常識で息苦しく生きていて
どこかせつない悲しみを感じてしまう。
でも、ちょっと視点を変えて生き方や考え方や
呼吸の仕方すら変えていけることができるようになれたら
昨日までの不幸が
じつは幸福のかけらだったということに気がつけれると感じたお話でした。
[1回]
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