春の泥 (キャラ文庫) (文庫)
水原とほる (著)
宮本佳野 (イラスト)
(内容)
医大志望で将来を嘱望される弟と、受験に失敗して以来くすぶり続ける自分。両親不在の春休み、大学生の和貴は、窮屈な家を出て自立する計画を立てていた。けれどその夜、二歳下の弟・朋貴に監禁され犯されてしまう!この飢えた獣の目をした男が弟…!?「ずっと兄貴だけが欲しかった」優等生の仮面を剥いだ弟の、狂気の愛に絡め取られるとき―住み慣れた家が妄執の檻に変わる。
ひさびさに水原さんらしい本を読んだという気持ちです。
近親相姦の兄弟ものですので
好き嫌い以前に嫌悪感を感じられて苦手に思う方もいらっしゃるかもしれませんが
あたしてきには許せれるお話でした。
妄執に近い愛情を家族という囲いの中で必死に守ってきた弟が
その愛情に気がつかないまま、家庭とか弟自身から逃げようとする気配を感じ
それまで必死に守ってきた理性とか自制心をぶち壊してしまい
ただただ兄に自分の気持ちをぶつけていくお話です。
その気持ちの伝え方に監禁とか、暴力・強姦がセットになってしまうのは
常識的には許しちゃいけないんでしょうが
弟のそれほどまでの想いに気がつかない
兄の無関心さにも罪はあったような気がします。
後半は弟の想いに気がついて遅ればせながら自分も弟を愛していることに気が付きますが
親という存在を抜きにしても
近親相姦という罪になかなか身を浸せきれません。
弟の何年もかけた気持ちに追いつけないことはあたりまえなんでしょうが
腹をくくりきってただひたすらに兄を思う気持ちにすら苛立って弟を拒否してしまいます。
一週間放置したあと、
自分が残した服を抱きしめてただひたすら閉じこもっていた弟をみつけて
ようやく弟ともに生きていく決心をつけるのでした。
どちらかというと常識人である兄なんでしょうが、
自分の心を壊してでも、欲しいと思いを募らせて兄に気持ちをぶつけていく弟くんのほうが
なんか心魅かれてしまいました。
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