欲望と純潔のオマージュ (ダリア文庫) (文庫)
華藤 えれな (著)
三雲アズ(イラスト)
(内容)
芸術大学の職員・八幡蒼史は著名な陶芸家の母の私生児という境遇から、
目立たぬように生きてきた。
だが、チェコからの留学生で若き天才彫刻家のカレル・バロシュと恋に落ち、
新たな生き方を模索しはじめた蒼史はカレルとプラハへ行く決心をする。
だが、ある事件が起きて…。
みずから諦めたはずの恋。
しかし病に蝕まれ、先の見えない体になった蒼史は一路プラハへと―!?
一途ゆえの不幸が静かに降り積もっていく・・・・ そんな読後感でいっぱいです。
陶芸家として著名な祖父。
そしてその芸術性を引き継ぐとともにエキセントリックさも過剰なほど持て余す母
留学生と恋に落ち、妊娠したにもかかわらず捨てられることで
より狂気を孕んだ母より 生まれおち
母の心の糧となることで生きてきた青年八幡蒼史
母の影によりそうように生きていくことを
知らず知らずのうちに強いられてきたのだけど
チェコからの留学生で若き天才彫刻家のカレル・バロシュ出会とい
彼に魅かれていくことで自我に目覚め
彼とともの生きていきたいと望んだのだけれど・・・
心の病に蝕まれた母から逃げようとしたことを母に察知され
失うくらいならと殺される寸前の目にあうのだった。
別れの言葉は・・意識の失う寸前にカレルにあてた短いメールしかできなかった。
やがて祖父を失い、母の最後も看とり
ひとりになった自分にもたらされたものは・・・・すぐに手術が必要な病気だった。
手術が成功する可能性は低く
もはや成功したとしても余命がいつまでかはっきりできるものでなく
命の最後にもう一度カレルに出会いたいと望んだのだけど
カレルからは侮蔑に満ちた表情と裏切ったと思いこんでいる絶望のみしかなかった
それでもよいから少しでも彼のそばにいたくて
カレルの言うがままに過ごす毎日だけど
いままで感じられなかったほどの幸福感得られていたのだけど
病魔は静かに進行し、徐々に蒼史を追い詰めていくのです・・・
きみの手でオレを美しい亡骸にして・・・・・
なんて悲しい望みなんでしょう。
子が生きていく上で、いつかは親をも捨てて独り立ちすることとか
自我を育てることもしなかった母の愛を蔑むことは簡単にできますが
そうすることでしか愛することをできなかったというサンプルしか経験できなかった蒼史
ゆえに蒼史の人の愛し方もどこかいびつで歪んでいたのではないかと思うのです。
愛と狂気のリンクはどこまでも不幸でせつなかったです。
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