恋ひめやも (キャラ文庫) (文庫)
英田サキ (著)
小山田あみ (イラスト)
(内容)
「想うだけでいいから、先生を好きなことを許してほしい」。結婚目前で参加した高校の同窓会で、担任教師の水原と再会した棚橋。昔の地味な印象とは裏腹に、艶めく笑顔の水原に、急速に惹かれていく。恋人より今は先生と一緒にいたい…。けれど、ある日突然「もう家に来るな」と拒絶され!?今ならまだ引き返せる、なのに想いを断ち切れない―執着も嫉妬も肉欲も、初めて知った真実の恋。
英田さんの作品ですが、刑事でてきません。
もちろん事件も起きません。
静かな日常の出来事の中に人の想いがさまざまに絡み合って混在しております。
“英田さんらしいとか”そう評できる作品ではないでしょうが、充分に楽しめる作品でした。
前半は攻め視点でお話はすすんでいきます。
高校の時の担任教師に再開し、
あのとき大人の象徴のように思えた彼が実はいまの自分の年齢であったことに気がつく。
今の彼とあの頃の彼との違い
それは自分が子どもだったということでしかなかったという事実
大人になったいまの自分から見たら彼がすごく魅力的で魅かれていくものがあって・・・
高校の時の付き合っていた彼女とは4年も続いていたが、良くも悪くもフラットであるという自分を見抜かれ
彼女を熱愛できないことにいら立たれ別れを告げられる。
今の彼女は結婚願望が強く、彼の結婚したいと思うまでは魅かれていない気持ちに気が付いていながらも
結婚という目的のためにはどうでもいいものと思っている。
結婚して修正していけばいいと思っているのかもしれないけれど・・・
自分的にもそこまで熱情をもって彼女に魅かれて行っているわけではないことに気が付いているが
そろそろ結婚する年齢かなと思い重い腰をあげようとしている
ごくごく当たり前の打算と計算で生きている自分に気が付いている。
それなのに先生を知っていくことで、
いままで計算して手に入れていったものにいかに魅力がなかったことに気が付いていき
どんどん想いは先生に魅かれていく自分を止めることができない。
先生がなかなか自分の想いを受け入れてはくれなくてもいい。
先生のもとにまめに通いながら、どんどん彼の好ましい点が自分の中で降り積もっていっていく。
桜をみながら、
月をみながら
本について語りながら・・
どんな時間を共有してもいとおしい存在であるということに気が付いていく。
いい意味でも悪い意味でもフラットであった自分が
こんなに激しい気持ちで彼を思うことができる幸福。
臆病で後ろ向き名先生も自分と同じ気持ちを持っているように感じてはいるが
素直に恋を楽しめない大人である先生は自分にもう会いにこないほうがいいと告げる。
それは男同士の恋愛に引きずってはいけないという大人の分別であり
恋したくないという先生の臆病な気持ちであるのだけれど・・・
先生の臆病さも打破して彼の気持ちを手に入れることができてほんとうによかったと思える。
後半部分は先生側からの語りとなり
なぜ彼があんなに生きることとか、恋すること、愛情を積み重ねていくことに臆病なのか読者と彼が知っていく。
先生の不安と孤独な想いにひきつけられていくあたしがいて
この恋が充分に積み重なっていてほしいとおもう。
さわやかな読後感の作品でした。
[1回]
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