啼けないカナリアはとかいう童謡を思い出してしまいそうでしたが
そういう世界からもう遠くに来ているようで思い出すことができませんでした
冬稀には親がいないために、2歳から施設で育てられ、頭の良さである特別な組織に入り、教育をうけたために、普通の感覚と言うか社会的な適応性とかはまるでありません
賀野瑛介に頭の良さで見出され創薬研究所にスカウトされるまで、自分の価値と言うか生きていくことの意味すら見出せずどこか空虚な自分をもてあましていました
「必要だ」そういってくれることが冬稀にとって本当に心から欲していた言葉でしたが
そう思うこともできないほど心の成長が伴っていなかったのです
小鳥が生まれてから始めてみた顔を刷り込まれるかのように恋心も刷り込まれていくのですが、それを自覚することもなくある事件が起きて
冬稀の心はますます後ろ向きに終わりのときを待ちわびて生きます・・
賀野も冬稀に心魅かれまがらも自分の恋心を表出できません・・・
冬稀にできることはただひとつ
賀野に迷惑をかけないように、もらったカナリアの餌箱にそっと隠してある毒薬を飲む時期を待つことだけ・・・
瑛介の異腹の兄であり、社長である森脇によって保護の代価として肉体を提供することを提案されても冬稀は黙って受け入れる覚悟をするのです
悲しいと言うか、切ないお話でしたが
後半自分の気持ちに気がついた賀野のエロさはなかなかのものです(笑)
初めて人間として成長していく冬稀の心と体の成長を少しずつ手助けしながら
肉体と心の喜びを教えていくんですもの(笑)
アタシ的にはお勧めの一冊です
啼けない鳥 (リンクスロマンス) (単行本)
きたざわ 尋子 (著)
陸裕千景子 (イラスト)
(本の内容)
身寄りがなく、天才が集まる組織で育てられた江藤冬稀は、創薬研究所に勤めている賀野瑛介に望まれ、入所することになった。自らに価値を見いだせない冬稀は、熱意溢れる彼の言葉によって、心に奇妙な高揚感を植えつけられた。冬稀は賀野のために日々研究に没頭するが、仕事よりも冬稀の身体を気遣う賀野の優しさにいつしか惹かれていく。しかし、自分が関わる研究でスタッフが事故死したことにショックを受け、研究が続けられなくなってしまい…。
[0回]
PR